<ヒナを拾わないで> 03/08/08
5月から8月は野鳥の子育て期。
注意しないと見つけられないけれど、ツバメやスズメ、ムクドリ、ヒヨドリなどは、
案外身近なところで巣づくりをしています。
で、この時期になると、時々見かけるのが巣立ち前のはぐれヒナ。
家でも何年か前に、玄関先に、ムクドリのヒナが潜んでいた事がありました。
植木鉢の間に隠れるようにうずくまって、怯えたような目をしてじっとこっちを伺っています。
周りを見上げても巣らしきものは見当たりません。
こういうヒナを見つけると、人は往々にして巣に戻そうとしたり、
それが近くに見当たらなければ、保護して育てなければと思ってしまいます。
私も慌てて野鳥に詳しい友人に電話して保護の方法を聞きました。
しかし、返事は意外なことに、保護してはいけないというものでした。
その友人曰く、巣というのは産室に過ぎず、親鳥はヒナがある程度飛べる大きさになったら、
茂みなどに隠れながら飛ぶ練習や、餌の採り方、危険なものなどを教えながら
自然の中で自立できるように訓練しているそうです。
でも、巣立ち間近なヒナは、うまく飛べないので、よく巣から落ちたり地面に降りたりしてしまうとか。
私が見つけたヒナもきっとそういう時期だったのでしょう。
この時期の親鳥は気配を消して子育てをしているので、近くに姿が見えなくても、
必ずヒナのところへやってきて世話をするから、安全な所においてそっとしておくようにと言います。
半信半疑のまま、でもヒナを捕まえる自信がなかった私は、親鳥が探すのを待つことしました。
そうこうしているうちに、半分しか飛べないヒナは、バタバタと這うようにして
自分から塀の際のツタの茂みの中に隠れてくれました。
カラスも猫もいる環境なので、家の中で気を揉みながら過していたら、
夕方暗くなりかけた頃、親鳥が鋭い声で鳴くのが聞えました。
そっとカーテンの隙間から見ると、1羽は木の高いところにとまって、あたりを見張り、
もう1羽は、餌らしきものを咥えて少し低い枝にとまっています。
その途端、それまで静かだった茂みの中からヒナがピ−ピー鳴きだしました。
両親そろってヒナの面倒をみにやってきたんですね。
それから1週間あまり、親鳥の涙ぐましい連携プレイが続き、ある日ふと気がつくと、
ヒナの声がしなくなり親鳥の姿も見えなくなりました。
もしや死んでしまったかと、ヒナがいたあたりをソーっとかき分けてみたけど
何も見つからなかったので、きっと無事に飛び立っていったのでしょう。
みなさんも、もし親鳥からはぐれたり、巣から落ちたヒナを発見したら、
かわいそうだから自分で育てようなどとは決して思わないで下さい。
ヒナを育てるには、24時間体勢で、数時間おきに餌をやらねばなりません。
幼ないヒナならば糞やオシッコが出やすいように刺激を与えたりもしなければいけません。
これを実行するのはとても大変なこと。ほとんどが数日で死んでしまいます。
仮にうまく育ったとしても、鳥の遺伝子を持たない私達には、
ヒナが自然の中で自立できるように教育する事はほとんど不可能です。
人間に育てられた水鳥は、お尻のところにある水を弾く脂を、嘴でうまく羽根につけられないために、
サラダ油を塗ってやらなければいけない、ということがあるそうです。
親鳥は、ヒナがどこにいようと鳴き声で居場所を見つけます。
ただ危険を犯してまでヒナに近づく事はないので、親鳥が通ってきてヒナを育てることができるように、
そっと拾って直射日光の当たらない、日陰の木の下や茂みの中など、
親鳥にとって安全と思えるような場所にヒナを置いてやってください。
*唐突にこんなことを長々と書いたのは、
友達のBBSで、心優しい人たちが拾ったひよどりのヒナが育たず死んだ話を読んだから。
ほんと、これは切なくて難しい問題です。
だからたぶん野鳥の会も毎年春になるとやるんですよね。
「ヒナを拾わないで!!」キャンペーン。
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