木村義志著 草思社 1,800円(税別)
「机の上で〜」のタイトル通り、比較的手軽に飼えて、
あまり場所を必要としない小動物の中から、昆虫・カエル
ヘビ・トカゲなど、著者が愛着を感じているものを中心に
紹介している、いわば、大人向けの飼育書です。
但し、ハムスターは載っていません(笑)。
冒頭で著者は、生き物が好きな人と、生き物を飼うのが好きな人とは
全く違うと書いています。
ただ好きな人は、飼育をしなくても、動物園やペットショップなど、
色々な場所で、生き物を見ることで満足できるが、
生き物を飼うのが好きな人は、見ているだけでは物足りず、
そばに置いて育てたい、積極的にその生き物と関わりたい人と。
又、「『死に物』だから『生き物』だ」。
「命の価値を知るいちばんの方法は、死を知ること。
死があるからこそ、命が輝いて見えるのだ」と言います。
そして、「自分の快楽のために飼い、その死を含めてすべての問題を
受け止める覚悟をもつのが飼育家。どんな人も、日常における社会性や
倫理観のレベル以上の飼い方はできない」とも。
この部分は、最近の小動物ブームで、おかしな飼い主に
腹立たしく思うことが多い中、なかなか、含蓄のある記述でした。
とはいえ、決して固い本ではなく、1頁毎に、「ふふっ」とか
「ははは」とか笑いながら読んだ本は久し振り。
だいたい、虫や爬虫類がウジャウジャなのに、です(笑)。
前半は、「物心ついたころから今日まで、誰が何をいおうと、
絶えず何かを飼ってきた」という、「飼育の達人」の著者の、
幼稚園のころから、高校生くらいまでの間の体験談。
虫を始め、いろいろな生き物との出合いが楽しく綴られています。
当時の大阪の街中の子供や大人達・・著者をとりまく愛すべき人たちとの、
エピソードがとても面白く、なつかしい感じがします。
とりわけ、虫好き少年たちのプロっぽい言葉には、思わず笑ってしまうほど、
今の子供にはない知恵が感じられて感心します。
後半の飼育の部分では、いろいろな生き物の採り方や、
飼い方が中心で、実際に生き物を飼った人らしく、
ポイントを押さえていて、わかりやすく書かれています。
中でも「爬虫類篇」は、著者の思い入れがあるのか、
それ以外の飼育篇の部分よりも読み物に近くなっていて、
楽しく読めました。
私もヘビを飼ってみようかなと、フト思ったほど(笑)。
間にところどころ挟まっている「へんな生き物を飼う」の経験談も
なかなか味があって、飼育書とはいえ、全体にエッセイのような本です。
随所に掲載されている、川上、小堀両氏の精緻なイラストも、魅力のひとつです
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