■本の部屋過去ログ・その4
2001年11月10日〜2002年1月15日(31〜35)

日付は上から古い順になっています。


31)想い草
どーも     投稿日:2001年11月10日<土>21時05分

鳥越 碧(みどり)著 講談社刊 2001年4月20日発行 1500円

老いを目の前に迎えた女性が、本当に自分らしい生き方を見つけ
ていく自省の物語。8つの短編からなっており、それぞれ表題に
は、「露草」「貴船」「舞塚」「墨香」「昔語り」「高山寺」
「錦木」「名残り桜」と、味わいのある名前が付けられている。

例えば、錦木は華道で用いる枝木のこと、花々のような華やかさ
はないけれど、いぶし銀の味わいを醸し出す。
名残り桜は、まさに老いを迎えた女性の一瞬の輝きを表している。
この時『この名残の季節もいいものかもしれない。』と思わせる。
(さくらは、盛りをのみ見るものにあらず。)

短編は、それぞれに関連がある話ではなく、一編一編が独立した
話になっているが、いずれも初老の女性を主人公にしており、
人生の大きな転機を迎えて(例えば、夫の死などのように)、
大きな喪失感を経たあとの、再生と自立の物語になっている。
短編は後半に進むに連れて、徐々に凄みを増してくる。
そのあたりは、充分に計算されつくした構成になっているようだ。
そして、最後にとてつもない優しさに包まれて・・・

著者はあとがきの中で、次ぎのように言っている。
「時(時間)に、二つの本性があることにようやく気づきました。
 残酷性とぬくもりと。
 私は、若い頃にはとうてい感じられなかった 時の二つの本性を
 写してみました。」

時はたしかに残酷かもしれない、
しかし、時間が過ぎ行き、人の人生に限りがあるからこそ、その
時間は甘く哀しいものになるのだろうと思う。
私は、できればそんな時を過ごした女性の顔に刻まれた残酷なしわ
を見るのではなく、そのくちびるに宿るほのかなぬくもりだけを見
ていたい、と真に思います。

この本は、特に若い女性におすすめ!
だって、若い時には気づかないような深みを教えてくれるのです。
それを、前もって知り得てしまうなんて、超お得ですよね。
そして、同世代の女性が読む時にはくれぐれも注意が必要。
あまりにも、直接に感応して、胸が痛くなるかもしれません。
もっとも、男の私としては、ちょっと話が甘過ぎるかなと思わな
いでもなかったけれど・・・
著者が時代物の書き手であることを考えれば、時代劇につきものの
きまじめさと人の心の美しさを強調するあまり、話しがうまくなり
過ぎるのはやむを得ないことかも?

著者は、この主人公達と同世代の1944年生まれ。
1990年に第1回時代小説大賞を「雁金屋草子」で受賞。
この「想い草」は初めての現代作品だそうである。
そういえば、どこか藤沢周平を思わせるような・・・
(そういえるほど、藤沢を読んではいないけど)

ところで、「思い草」とは、植物学的には「ナンバンギセル」と
いうハマウツボ科の寄生植物だそうで、日本全国に自生している。
うなだれるようにして花を咲かせることから、古来、「思い草」
という名で呼ばれてきた。
万葉集にも次ぎの1首が見られ、この本の扉の辞にもなっている。

  道の辺の 尾花が下の 思い草  
        今さらに などかものを 思はむ(読み人知らず)

(尾花はススキのこと。)ススキもうなだれているけれど、その下で、
さらにうなだれているお前はそんなに何を思い悩んでいるの? と、
思わず肩を抱きしめたくなるような風情の植物なのです。
32)イルマーレ
うる       投稿日:2001年11月21日<水>14時56分

⊃`ノ二千ヮ...φ(´ー`*) 映画大好きのうるです。
☆ヽ(▽⌒*)よろしぅ♪

時々、私が観た映画を、私のちょっとだけの感想を付けて皆さんに紹介しますね。
でも、ストーリーを教えるなんて野暮な事はしません。。きっぱり。

ですから観てみようかなぁと思った方は私のちょっとの感想を頼りに♪〜( ̄ε ̄;)
映画館へ足を運んで.。。。(^_-)ネッ

 
イルマーレ  韓国映画 11月10日(土)より11月23日(金)迄(札幌劇場)
 
 とても観たかった映画。。。
吹きガラスを思わせるような透明なブルー。飾りのない風景が
陶器に焼きつけられたように静かにそこにある。
そして、感じている思いが 素直に言葉にかわって心を揺さぶる。
優しくて暖かいそしてファンタジックな作品でした。

これって・・シナリオを読みながら映像をみたら最高かも・・・?
《現場の声》 いやーひさしぶりに退屈な映画だったべさ〜
         (お・おばちゃん・・・感性ほしいっしょ~(=^‥^A アセアセ・・・)
33)12月に読んだ本のご紹介
どーも    投稿日:2001年12月30日<日>00時51分

すっかりご無沙汰しています。
なかなか、まとまった時間がとれなくて、
投稿していませんでしたが、本はちゃんと読んでます。
今回は、簡単に紹介だけを、それと一応評点を・・・
(★のマーク:5つが最高)

「美妙、消えた。」嵐山光三郎著 朝日新聞社刊
★★★☆☆
明治の初期に、言文一致体を目指して登場した
作家山田美妙の評伝風小説です。
以前、雑誌「太陽」の編集長で、また、昭和軽薄体の元祖でもある
嵐山光三郎が、美妙にのめり込んで書いた力作。
私が、あまり関心のある分野でなかったため、
評価は少し低めになってはいますが・・・

心の砕ける音」トマス・H・クック著村松潔訳文春文庫
★★★☆☆
記憶シリーズで好評を博したミステリー作家クックの
最新作です。お馴染みの大どんでん返し小説ですが、
話しが甘過ぎます。(人物が優しい、いい人過ぎる。)
ハードボイルド派の私としては、かなり物足りなかった
と言っておきましょう。

ツチヤの軽はずみ」土屋賢二著 文春文庫
(評価の対象外)
哲学者である著者の、ハチャメチャ本。
まあ、滑稽だけという本なのですが、
ほんの少し、人生の真実も含まれています。
なぜか、はまって読みつづけています。

いつか王子駅で」堀江敏幸著 新潮社刊
★★★★☆
芥川賞作家堀江敏幸の最新作です。
受賞作「熊の敷石」よりは、少し力が抜けた味わい深い作品です。
日常のなにげない情景のなかに描かれるユーモアとノスタルジーが心地よい。
往年の名馬もたくさん登場しますよ、ピットさん。

人道的支援」最上敏樹著 岩波新書
★★★★★
迫害を受け、生命が危険にさらされている人々を助けるために、
武力の行使は許されるかをテーマにした本。
アメリカの同時多発テロの直前に書かれているが、まさに、
今回のアメリカの報復戦争を真っ向から捉え直すには格好の本。
それにしても、日本は本当に平和ボケなんかしているのだろうか。
今回のアメリカの行動に真っ向から声を挙げた人が、一体何人いただろう。
むしろ、暴力ボケしていると言いたいくらい。

東京の戦争」吉村昭著筑摩書房刊
★★★☆☆
著者が、自らの戦争体験を半世紀ぶりに綴ったエッセイ。
救いのない体験と暗い時代が、淡々と軽快に描かれている。
ただ、小雑誌に連載されたものだけに、
いつもの抉るような切り口には欠けているかも・・・

ハドリアヌスの長城」ロバート・ドレイパー著
三川基好訳文春文庫
★★☆☆☆
今年のベストミステリーだかなんだかで、随分高い評価だったので、
この分厚い文庫、無理して読みましたが、はっきり言って、時間を返して!
単に、私好みではないというだけですが・・・
34)「対岸の家事」「模倣犯」
うさ    投稿日:2002年1月7日<月>15時01分

すっかりごぶさたしてましたが、お正月休み、
ぐうたらしながら読んだ本を紹介させていただきます。

まずは軽く
南伸坊「対岸の家事」(新潮OH!文庫)
思わずタイトルで、買いました。
連載されていたコラムをまとめたもので、
「家事」というもののまったく「対岸」にいた
イラストレーターである筆者が、連載の為に、
一つ一つ「家事」なるものに挑戦したその手記です。
実際に「家事」を日常的にされてる方が読むと、
「なにをいまさら、言ってんだか」ってな内容で、
しかし、そこが新鮮で面白いわけです。
小さいころから当たり前に、食事を作ったり掃除をしたり
そんな風に育てられていたらわかることが、
特にこの筆者世代の男性には、全て初体験。
しかし、やってみると、大変なところもわかり、楽しいところもわかる。
男だから、女だから、なんてことではなく、
それぞれが得意な、楽しいと思えることをやって日々が過ごせたら
いいのになあ・・・・・
なんて、あっさりと思う、そんな本です。
伸坊さんは、一応本職イラストレーターですが、
路上探偵や「顔」の話など、興味深いエッセイがいっぱいあります。
楽しく読めるので、是非。

次は重く(本の重さです)
宮部みゆき「模倣犯」(小学館)
公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。
それは「人間狩り」という快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。
直木賞受賞作『理由』以来三年ぶりの現代ミステリー。
と解説には書かれてます。
上下刊で、1ページ2段、
正月暇つぶしには最適かと、重いのを実家にまで持ち込み
読んだんですが、
う〜〜〜〜〜ん、尻つぼみ。
上巻は、話の種まきで、下巻は刈りとり。
当たり前ながら、上巻は非常に面白く読めるのですが、
下巻になると、すっかりパワーダウン、
被害者、加害者、警察、それを追うライター
それぞれの立場から書かれているのが、展開としては、面白いのですが、
そのせいか掘り下げ不足。
特に警察に関しては、素人の私でも、
「警察そこまでばかじゃないよ」と突っ込みたくなっちまいました。
武上という刑事そのものは魅力的なのですが
高村薫のようなきびしい表現が恋しくなりました。

ただ、最後まで読めたのは
ある被害者の祖父が、非常に丁寧に描かれていたこと、
全体の骨ともいうべき存在で、
彼の語り口、心情などの表現は、好みでした。
が、
上下刊で3,800円(税別)
すいませんが私は買いません。
借りて読んで、よかった。

どーもさま
「真夜中の死線」読みました。
いやあ、アメリカって感じですねえ。
すべての描き方が、アメリカ。
ヒューヒューって口笛を吹きたくなるような展開。
裏表紙に「死刑執行サスペンス」の逸品とありましたが
「死刑執行サスペンス」なんてジャンル勝手に作るなよ
と、最後に軽い突っ込み。

◎はるみ      題名:家事の楽しみ 投稿日 : 2002年1月7日<月>18時14分
うささん、お久し振りです(^^)
今年もよろしく。

「対岸の家事」
日経新聞に連載されていたものですよね。
連載中は、欠かさずに読んでいました。
伸坊さんと奥さんが楽しそうに家事をする様子に、
読んでいてなんだかとても幸せな気分になるコラムでした。

私も数年前までは、このように家事を楽しんでやっていたものです。
台所の収納を工夫したり、保存食を作ったり、毎日の料理も
クラフトのようで、何年も飽きずに楽しんでいたし、
誰もが嫌う換気扇の掃除すら、好きな仕事でした。

今でも、もちろん家事を楽しんでいる私はいるのですが、
ひとつひとつに、この伸坊さんのように感動することが少なくなって、
しかたがない、ここには私しかやれる人間がいないからやろうか、
と言う気持ちで、機械的に片付けている事が多々あります。

伸坊さんが慣れない家事をこなしていく体験を通して、
自分でやってみることの楽しさみたいなものを見い出していく過程は、
忘れていたあの楽しかった気持ちを思い出させてくれました。

ほんとは、料理もハウスキーピングも、その過程がクリエィティブで
面白いから、夫にもその楽しみを分けてあげたいと思う反面、
私の年代は、どこか、自分の分野を手伝ってもらう、やってもらうという
意識が抜けないんですよね。
それに男女の役割分担をウンヌンする前に、家はどうも私のほうが、
この分野は得意そうだったし。

でも、これから先、お互いの体力や時間が変化していきますものね。
彼も、最低限自分の身の回りの事ができなければ、一人になった時
慌てるでしょうしね。
私も、伸坊さんの奥さんのように、「やってみる?」と温かく辛抱強く
見守る妻になってみようかしらん。
いつまでもいると思うな有能な妻ってね(笑)。

◎うさ      題名:家事は職人仕事 投稿日 : 2002年1月7日<月>19時49分
はるみんさま
きっと、知ってらっしゃると思ってたんです、この連載。
南さんちは、空気がいいんですよね、ゆったりと夫に挑戦させてくれる。
私の友人の子供、男子3歳8ヶ月なんですが、
母親が料理してると、猛烈に興味があって
どんどん手伝いたがる、しかし、手伝われると、母は10倍手がかかる。
でも、そこが辛抱(伸坊?)やらせないと、将来食えないぞと。
横からおどしたりしてます。
今の30代以降は、なかなかむずかしいですよね、
男子は技術、女子は家庭科なんて、今考えるとぶっとびますよ。
しかし、例えば、スーパーマーケットで、
家族で買い物するお父さんは、微笑ましいのに、
ひとりカゴをぶら下げて、お惣菜なんて買ってるおやじ(言い方まで変えるし)
を見ると、
なんか、哀れと思ってしまうその意識が、ダメなんですわ。
ほんとはおじさん、とっても楽しいかもしれないのに。

家事は職人仕事、そこの奥深さを、おじさんに教えねば、
そんな気持ちになった「対岸の家事」でした。

◎どーも      題名:小型セスナも模倣犯? 投稿日 : 2002年1月7日<月>21時44分
うささん、相変わらず、読書三昧ですね。
私は、どちらかというと少ない時間を見つけては
ちょこちょこ読み継ぐというスタイルが多く、
休みの時にまとめてということは、逆にできません。
それで、作年末に、自分への1年間のご褒美にと思い
まとめてどさっと本を買い込みはしましたが、
ほとんど手を付けずに年を越してしまいました。

さて、宮部みゆきの「模倣犯」について楽しく
読ませてもらいました。
私は、この本を読んでいませんが、というか
宮部ものは1冊も読んでいないのですが、
うささんの読後感が、よく伝わってきました。
実はこの感じは、ベストセラーの本の宿命でも
あるのではないでしょうか?

「模倣犯」は、何と言っても昨年の本の世界では、
「センセイの鞄」(笑)と並んで、読者に最も支持された
本ですよね。いろんなところで、ベスト1の呼び声が
高かったと記憶しています。
(もちろん、外国文学ではハリポタですが・・・)

しかし、多くの人の支持を得るということは、
逆にいうと、強烈な個性に欠けるということなのです。
つまり、「おもしろかった」とか「楽しめたよ」とか
「感動したわ」というのは、めちゃめちゃ沢山の人が
感じてしまうと、それは、そこそこ、まあまあ、なかなか
だったのであり、また、そういう平均化されたものに
色あせてしまう(読んだ後で本が変質するというのは、
矛盾ですが・・・)運命にあるのです。

私が、よほどのことがない限り、ベストセラーに
手を伸ばさないのは、このためです。

うさ様が、感じられたのと全く同じことを
私は、天童荒太「永遠の仔」で体験しています。
もちろん、おもしろかったし、感動もしましたが、
私の胸には、深い余韻は残りませんでした。
(それと、敢えていうならば、「永遠の仔」は
出版社がムリに作り上げたベストセラーという
印象でした。)それにしては、売れましたが・・・

もちろん、これは、私の経験に基づく持論であって、
真理ではありません。
人は、私のことを、へそまがりと言います。念のため。

それにしても、部分的には共鳴できる登場人物がいて、
最後までおもしろく読めたようですから、
結構なことでした。よしとしなければね。

うささん、これからも、どんどんおもしろい本を、
紹介してくださいね。
それにしても、私がお薦めした本を次々読まれてしまったら
これからは、少し新潮に、いや慎重に本を選ばなければね。

◎うさ      題名:乱読 投稿日 : 2002年1月8日<火>13時46分
まず、修正、
今気が付きましたが、上下巻の「巻」を私「刊」って書いてました、失礼。
どーもさま、
いやあ、わかっていただけたようで、うれしいっす。
談話室の方にも同感の御意見書かれてましたね。
読み終わったあと、なんでこんなんが、そんなに売れるんじゃ!?と
何度思ったことか、
で、私は、まず買わないんですが(買えないともいいます)
本好きの友人は、話題の本は全て読む人で、
わたしは、いつもそのお下がり、
「面白かったよ〜〜〜」という言葉も、
なんにでも素直に感動できる友人の言葉、
ひねくれ者の私は、読後につっこむつっこむ、
ただで読んどいて、文句だけ言うやな奴なんですね。

「永遠の仔」思い出しました。
あれもその友人から借りたんでしたわ。
物語としては、印象には残ってます、泣いたし。
でも、私がいやだったのは
天童さん、やさしすぎる人なんじゃないかと、
現実にあのような人生を送っている人達に会いすぎて
その為、登場人物に対して、はれものに触るようで、
いたわりすぎ、いたいたしい、
その辺が、私には、どうも居心地が悪くて。

もしかして、どーもさま、幻冬舎お嫌いですか?
純粋に本を愛している方々から、評判悪いんですよね。
なんたって、マドンナ写真集から、大河の一滴まで
節操ないですよね、
でも、私、あの社長、見城徹、面白くて好きなんですよ
ほとんど下品なくらいのどん欲、旺盛な好奇心
本なんて高級なもんじゃない、っていう発想。
だからって、郷ひろみの「ダディー」はないだろう、って
突っ込めるとこも。

自分の好みがあるから、ついつい同じ系統の本ばかりになる
ベストセラーには手は出さない、
自分の読書経験(少ないですが)から、
かえって読む本の幅を狭めてると思うことがあります。
だから、なるべく、友人にすすめられると、素直に読んでみます。
ここに書かれている本も、どんどん手を出して、
なんにもこだわらず、へらへらと色んな本読んでいきたいな、
そんな中から、お〜〜〜〜!!っていう本に
出会えたら最高ですよね。
皆様、いっぱい紹介して下さい!

◎どーも      題名:厳冬じゃ〜 投稿日 : 2002年1月12日<土>19時40分
札幌は、この冬、雪も多くきびしい寒さが続いています。
うさ様、いかがお過ごしでしょうか。
私、乱読の不摂生がたたり、今日は臥せっておりました。
しかし、誤解を解くべく、重い筆をとっております。

厳冬、いや、幻冬舎の件は、うさ様に言われるまで
気がつきませんでした。
というわけで、私は出版社に特に拘りはないつもりです。
ないつもりだったのですが、でも・・・
うさ様のお便りを拝見して、ちょっと思い当たる節があります。

それは、見城氏が、もと、敏腕の編集者だったということです。
たしかに、すごい経歴の魅力的な人物のようで、それだけに
出版するものに、彼の確たる信念のようなものが
貫かれているような気がいたします。
その気迫が、作家の思いを凌駕して読者に響いてくる、
そんなカリスマ性を感じてしまいます。
それだけ力をもった作品群が、多くの読者を惹きつけずには
おれません。
で、次々とベストセラーということになるわけでしょう。

彼のそういう方針が、活字に関心の薄い多くの若い読者を
発掘したことは、大きく評価していいでしょう。
しかし、作品にあまりにもあからさまにメッセージを
盛り込むことは、読むものの想像力を奪ってしまう危険が
あると思います。(場合によっては、作家の創造力までも・・)
つまり、幻冬舎の体質は、ベストセラー本の体質に通じる
ところがありそうです。

なんといっても、まだまだ若い出版社です。
どんどん若い読者層の開拓に大きな活躍をしてもらいたいですね。
若い作家も、彼の魅力に惹きつけられて、活躍をしていますから
その第1世代の今後の成長を見守っていきましょう。

当分、厳しい寒さも続き、インフルエンザのきざしもチラホラ
見え隠れしています。どうぞ、ご自愛のうえお過ごしください。
愛の領分
ダークピット      投稿日:2001年9月15日<土>18時01分

藤田宜永著 文藝春秋社
2001年5月1日 1700円

五十男の恋愛小説。これで直木賞受賞。
若い頃、一緒に遊んだ友(昌平)が主人公(淳蔵)の仕立屋に突然訪ねて来る
ところから話は始まります。筋無力症の妻(美保子)に会って欲しいと懇願され、
困惑する淳蔵。実は、美保子と淳蔵には過去の深いいきさつが・・・・。
美保子を訪ねた古里、長野の上田で偶然に新しい出会い。
こうして、過去と今との葛藤が始まり、やもめ中年男、淳蔵の恋が始まる。

話の筋は四人の男と女の「心と体」の葛藤。まあ良く書けている恋愛小説。
とりわけ、優れているのは藤田氏の風景描写。大変、巧いです。
お茶を飲みながら、羊羹をお口に運びながらご一読下さい。

男と女の恋愛には「愛の領分」があって、その恋が成就するか否か、
釣り合うかどうかは「領分」で決まるんだってさ・・・。

※ピットの領分(守備範囲)はユーラシア大陸ほど広いぜ。

◎どーも      題名:僕にも領分わけてください 投稿日 : 2001年9月17日<月>15時59分
さっそく読んだんですね。
さすが,男と女の間の細やかな機微を大切にする
ピットさんらしく,研究熱心なご様子には
頭が下がります。
下げたついでに,ここだけのつまらない話しと
お許しいただきたいのですが・・・

藤田宜永といえば,やはり奥様の小池真理子を
思い浮かべちゃいますね。
小池さんは,作家のなかでも1番の美女,間違いなし。
本を読んだことはありませんが,雰囲気もなかなかのもので
大人の女という感じがします。

そして文学界第2位は,清水博子さんです。
この方は,あまり知られていませんが,美人です。
「街の座標」ですばる文学賞を受けています。

そして,第3位は,今をときめく川上弘美でしょう。
身長175cmの大きな方ですが,その文章はふわりふわりと
虚実の世界をいったりきたり,過去に出した作品の
ほとんどが何かの文学賞をとったという才媛です。
いま,彼女の最新作「センセイの鞄」を読んでますので,
近いうちにご紹介します。

さて,藤田宜永は以前は,国際派サスペンスものを
書いていたようですが,最近はもっぱら恋愛もの
それも,大人の読者をうならせるいいものを書いています。
でも,小池真理子の旦那なので,くやしいから読んでいません。

35)サスペンスだ!
うさ(423) 題名: 投稿日 : 2002年1月14日<月>20時23分

ダークピット様
はじめまして、
すっかり忘れたころになってしまいましたが
「愛の領分」読みました。
「お茶飲みながら、ようかんを口に」とありましたので
おきらくに読みはじめたんですが、
すごい内容、
ジェットコースターなストーリー展開。

前半は私の中で一方的に「美保子」を悪者として
読んでいたんです。
(なぜか頭には八千草薫、やさし気な顔で悪魔)
「ろくでもないババアだなあ」と。
しかし、次々に真実が明らかになると
(まるでサスペンス)
どいつもこいつもろくでもなくて、
そっかあ、恋愛ってろくでもないことなんだ。
と、しみじみ思ってしまいました。
「潔い恋愛」ってかっこいいけど
ほんとは、なかなか潔くなんかなれない。
徹底的に潔くない人達ばかり4人集めた
そんな恋愛小説ですよね。

これ、4人の中で誰が一番理解できるかって
友達と話すと、けっこう盛り上がります。
「悪意がないのは佳世じゃない?」
「いや、なかなかしたたかだよ」
「淳蔵の罪は?」
「根性ないとこでしょ」
「悪って言うと、昌平だよね、
全部知っててさ」
「勝ってる気でいた時もあったんだろうね」
「しかし、美保子はなあ、」
「反面教師
「明日死ぬとしてもあんなふうには
なりたくない」
なんて感じで。
年令によって受け止め方も変わるんでしょうね。
ちなみに私は30代
ピット様は?

仕立て屋で思い出しましたが
「仕立て屋の恋」っていう映画ありましたね。
イール氏だったかな、主人公の仕立て屋。
私の中で恋愛映画のナンバーワンなんですが
何もそこまでしなくても・・・・・
っていう気になるくらい
純粋で潔くて、哀しい映画でした。

では。


◎ダークピット      題名:潔くなれない50男 投稿日 : 2002年1月15日<火>16時59分
うささん、初めまして。
「愛の領分」読まれましたか。そうですか。
サスペンスにも似たドラマチックな展開。ご堪能?されましたか。

実は、この本何気なく本屋で立ち読みして、
なんと最後まで読み切ったのです。
(勿論、後日購入しましたが・・・・)

仰有る通り潔くない50男が登場する「お話」ですね。
おまけに、ろくでもないと来てるモノですから、
自分に投影して現実とストーリーが行ったり来たり、
不思議な気分にさせられたました。

立ち読みで、あの長い小説を一気に読み切る。
どうしても、読み進みたかったものがありました。

読後の感想。やっぱり、私は「不良」だ。

登場人物の誰に自分を投影したか。それは淳蔵でしょう。
彼は、昌平が死んだ後、お墓参りもしないでしょうし、
美保子のことも、思い出さない奴です。きっと。
ただ、その場をうまく生きるしかない、いい加減な、弱虫男。
そして、始末に負えない優しさがあります。
共感とは言いませんが、同じ臭いを感じたものでした。
(あ〜 ここは自分を語る場ではなかったか。)

加えて、これを読んだ愚妻が一言。
「くだらん!」だと。
胸を撫で下ろしました。(笑)

さてキャステイングの発表です。
淳蔵(小林薫)
昌平(大杉漣)
美保子(石田あゆみ )
佳世(寺島まゆみ ちょっと若過ぎるか)
如何でしょうか。 

愛することは女の言いなり?イールさん。
「純粋」で「哀しい」役回りは男と決まってます。

書き散らかしで済みません。
では失礼。

◎うさ      題名:やられた〜〜 投稿日 : 2002年1月15日<火>20時39分
ダークピットさま

う〜〜ん
いしだあゆみ、
ジャストフィット!!
最高です。

私の中では、なぜか、年令がもう少し上に感じられて
加藤治子っていう線もあったんですが・・・・

小林薫・・・・好きなんだよ〜〜〜
だけど、かなしいけど、ぴったりですわ
優柔不断な感じ。

しかし、ここまで見ると、まるで向田邦子ドラマですなあ。
ま、まさに「阿修羅のごとく」
ちなみにBGMはトルコの民族音楽でしょう、あの、反音階系の。

キャスティング たのしいっすね。

では、


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