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ちょっと古いけど、昔は名レストランだった店が居抜きで安く出ている。
場所は悪くない。人通りもある。
なーにちょっと手を入れれば、1年もしないうちに評判の店になれるさ。
田舎で評判の料亭の番頭をしていた男も手伝ってくれるというし、
マネージャーにぴったりなのや、レジやホールを任せておけば大丈夫そうな、
元気な若手の人材も揃っているし、それではやってみようかと、
人の良いおぼっちゃんが、仲間に担ぎ出されてオーナーシェフに収まったはいいけど、
準備も充分にできないまま翌日から開店。
なれない手つきで、いざ料理をしようと思ったら、ガス台には古い汚れがこびりついていて、
ガスが充分出てこない。換気扇は回らないし、お鍋は穴だらけ。
食器も数はあるけれど、ひびが入ったり欠けたりで使えそうなものが少なく。
ガタピシする奥の倉庫の扉を開けてみたら、いつのものかわからない
腐りかけたものが大量に出てくるし、ホールのテーブルも壊れかけ、椅子も足りない。
しかし、表には連日、配られた無料券を手に、順番を待つ客の長蛇の列。
お店は、年中無休を謳っているので休むわけには行かない。
営業しながら、古い汚れを掃除しつつ、少ない手持ち資金から何とか修繕したり、
買い足したりして、スタッフみんなで力を出し合ってやってはいたけど、
満席状態でたくさんの注文が押し寄せると古いキッチンでは、なかなか時間通りにこなせない。
開店サービスの景品がついていたうちは、ニコニコ辛抱強待っていたお客も、
だんだん、表のサンプルと実際の料理が違うとか、待ち時間が長いとか、
量が少ないとか、素人料理でまずいとか文句を言うようになり、
スタッフの中にも、そんな彼を手伝うどころか、のろまさ加減を責めるものまで現れて、
連日の寝不足も重なってほとほと疲れた店主。
とうとうお店を投げ出して出て行ってしまった。
残念だけど仕方がない。
出て行った店主を責めるのは酷ってもの。
良かれと思ってしたことがことごとく裏目に出て、
言い訳けをよしとしない口下手店主には、耐えられないことだったのでしょう。
この街には、他にも、得体が知れない創作料理を出す店や、老人ばかりの小料理屋。
老舗だけど寂れて評判が落ちている料亭、外で宣伝するスタッフは多いけど、
さっぱり客が入らない店など、数だけは揃っているけど、どこもお金を払ってまで
食べに行く気がしないお店ばかり。
店主が逃げ出したお店には、すぐに新しい店主がやってくるようだけど、
営業しつつ壊れかけたお店を直して軌道に乗せていくには、時間がかかるのは当たり前。
こんどはせめて1年は辛抱しようよ。我々客たちも。
お店や店主を育てるのは、お客なんだから。