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野蚕糸(インドの山繭タサールサンと中国の栗繭)で織られた紬の単衣です。
艶とシャリ感があって着やすい着物です。
これ、実は、ネットのオークションで仕立てつきで35,000円と
破格値で落札したのですが、私はどうしても長羽織にしたくて、
出品者の呉服店の人が「旅館のどてらになりますよ」
とアドバイスしてくれたのに、それを押し切って作ってもらいました。
紬で作りたいと思ったのは、以前雑誌で見た、名和和子さんがお召しになっていた、
上田紬で作った羽織のイメージがあったのです。
ざっくりしていて、ちょっとツィードのジャケットのようで、ウールや紬の上に
ぴったりな羽織でした。
それで、この栗繭と、山繭の混じったざっくり感が、あれに近いものになるように
思い込んでしまったのです。
出来あがってきて、心弾ませて箱を開けたのに、羽織ってみて大ショック。
硬くて、案山子の上着のようでした。(^^;
生地に張りがありすぎるのです。
なるほど、「どてら」。
言葉で受けたイメージがずれていたことに、そのときやっと気づきました。
私は、「どてら」から、厚ぼったく出来ると言っているのだと思ったのです。
羽織は、普通、綸子や絞り、ちりめんのような柔らか物で作って、
てれんと下がる優雅なイメージのものなので、紬には向かないと言われたのだと
思い込んでしまったのです。
実物を見ないで買う危うさ、メールでのやり取りの落とし穴です。
後悔先に立たず。プロの言うことは聞くものです。
悲しくて悲しくて、どうしようかと思いましたが、そのままでは、着物も私も救われません。
次の日、東急デパートの呉服部に駆け込んで、和裁が出来る古株の店員さんに
単衣の羽織に出来ないか相談。
その方が言うには、この生地は単衣でも羽織には向かない。
上田紬というのは、ざっくりしているけれど、もっと柔らかいのだそうです。
これは、単衣の着物にむいてる生地とのこと。
ただ、丈が長いとはいえ、一度羽織になったものを着物にするには、
裁ち合わせのやり繰りが大変そうです。
ちょっと預からしてもらって考えてあげると受けてくれて、それから数ヶ月。
どう生地のやりくりをしてくれたのか、帯に隠れるところに剥ぎが入っただけで、
ちゃんと私の寸法で単衣の着物に仕立てなおしてくれました。
それもベトナム仕立て、1万円で。
自分のところで作ったものではないのに、それに私は、バーゲンで小物しか
買い物しない客なのに、顔なじみというだけで、なんとか、生かそうとしてくれて、
ほんとうにありがたいことでした。
おかげで、トータルでも、とても格安の着物になりました。
すぐに、先のネットの呉服屋さんにも経緯をメールして、アドバイスを
素直に聞かなかった自分の失敗、でもこうやってよみがえり、
いっそう愛着がわいたので、大切に着させてもらうと伝えました。
その方からも、もう少し踏み込んで説明すればよかった、
でも、愛用できるように変えられて良かったとお返事を頂きました。
このように、呉服の世界には、親切な職人かたぎの人が多いのですが、
あこぎな、押し付け商法の呉服屋のおかげで、呉服は高い、
呉服屋の敷居をまたぐのが怖いイメージになっているのが、残念です。
というわけで、反省やら感謝やらで良い経験になった、単衣の着物、初おろしです。