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演目は「義経千本桜 渡海屋・大物浦」
「口上」（三代目中村又五郎、四代目中村歌昇襲名披露）
「吉野山 道行初音旅」
「天衣紛上野初花（河内山）」
NHKの大河ドラマ「平清盛」の視聴率が低迷しているようですが、
平氏一門の物語って、日本人の情に訴えるものがありますね。
「平氏でなければ人にあらず」といわれたほどの権勢と栄華、
源義経に攻められて壇ノ浦で滅亡の悲劇…。
本当にドラマチックな一族の物語なのに、
なんでNHKの大河が低視聴率なのかなぁ（笑）。
で、「義経千本桜」の中の「渡海屋」と「大物浦」はその平家滅亡後のお話。
主役の平知盛は清盛の四男で武と知を備えた平氏の大将。
お芝居は、壇ノ浦で入水自殺したといわれるこの知盛が実は生きていた、という物語です。
知盛は渡海屋銀平と名乗り、大物浦（だいもつのうら・兵庫県尼崎あたり）で、
娘と女房と暮らし、船問屋をしています。
娘は実は安徳天皇で、女房は安徳天皇の乳母である典侍の局。
ひそかに源氏を打つ機会をうかがっていたのですが、
そこに、やって来たのが、兄の頼朝に追われ都落ちしてきた義経一行。
知盛は平氏一門の仇を討つ絶好の機会と、
船出した義経を追って、自らも鎧に身を包み、海戦に挑みます。
が、大物浦で敗北。
もはやこれまでと、典侍の局も自害。
知盛は、義経に安徳天皇の行く末を頼み、
錨と共に海の中に消えていきます。
この壮絶な最期が見もので、岩の上に立った知盛は太い綱をぐるぐる体に巻きつけ、
錨を担ぎ上げ、それを海に落とします。
と、綱がしゅるしゅるっと海に引っ張られ、
ついには知盛の体を海に引きずり込み、知盛は仰向けに落ちていく…
いくら鍛錬している役者さんとはいえ、
知盛を演じる中村吉右衛門丈はことし６８歳。
ハラハラして見守ってましたが、無事に見事な最期を遂げられました＾＾。
幕がおりた後、義経は安徳天皇を大切に抱き上げ、
弁慶らと共に花道を去っていきます。
吉右衛門丈の知盛は鬼気迫り、
一門の仇を討てずに死んでいく悔しさ、悲しさがひしひしと伝わってきます。
言ってみれば、現代に生きる私なんかがそう易々と感情移入できるわけがないのに、
知盛の悲劇性が胸を打ち、悲しくなってくるのが、不思議と言うか…。
これが、芸の力なのか！ 感動しました！
実は、この「渡海屋」と「大物浦」は
７、８年ほど前に片岡仁左衛門の知盛で見ていました。
そのときは、重厚な最期のせいもあって、
やたら肩の凝るお芝居だなぁという印象しかなくて(>_<)。
次に見たのは、東京の歌舞伎座で、はるみさんやコロンダさん、ゆりっぺさんと。
あれからもう３、４年になるのかなぁ。
そのときの知盛は吉右衛門。
やっとこの芝居のねらい、面白さが少しわかったような気がしたのを覚えています。
で、３度目の今回。やっとやっと物語の中に入れました。
見る、ということも練習というか、訓練が大事なんだなぁと、あらためて思った次第です。